日本福祉文化学会

第29回日本福祉文化学会大阪大会



 
大阪大会報告                    大会会長 石田易司(桃山学院大学)



 秋の日差しがまぶしい日々でした。毎日通っていた大学だけれど、普段通らないところを通ると、ケヤキやサクラの紅葉がとてもきれいで、全国から集まっていただいたみなさんをいい季節にお迎えすることができて、喜んでいます。
 私たちは本当に利用者の声をちゃんと聴いているのだろうか、という思いから「語り」という言葉をキーワードに大会を開きました。
 冒頭の木津川計さんの東京と大阪の文化の比較からの語り文化についての話にまず圧倒されました。80歳をはるかに過ぎて、杖がなければ歩けないのに、しゃべりだすとしゃきっとしている木津川さん。ただの印刷屋のおやじが一人で上方芸能を研究し、大学教授にまでなった人の造詣は半端ではありませんでした。半分が武士だった江戸に比べて、大阪には武士がほとんどいなかったので、建前より本音で、また思いやりにあふれた文化、言葉が育まれたとか。まさに福祉の文化です。笑いもこうした世界から生まれたと。
 その後、この文化論を福祉の世界にどう生かすかを考えるために、岡村ヒロ子さんをコーディネーターに、会員の清水明彦さん、結城俊哉さんと共同開催したスペシャルニーズキャンプネットワーク推薦の金香百合さんをスピーカーにシンポジウムを開きました。本当はお酒でも飲みながらという柔らかい発想の進行役の岡村さんは、前に3人並べるのではなく、4隅に会場を囲むように座ってもらい、そこからそれぞれの持論を述べてもらうという突飛な趣向。聴くということの大切さこそ、福祉の世界で私たちが最も大切にしなければならないことを痛感しました。
 理事会、総会、自主企画、研究発表、懇親会など恒例のプログラムに、コリアタウン探訪など大阪らしい現場セミナーを加えて、2日間の日程を終えました。
 次回は「名古屋」。今年、中京大学に転出したばかりの中嶌洋理事が、空白地帯を何とかしたいと立候補の声を出してくださいました。ぜひ、名古屋周辺の仲間を誘って参加していただければと思います。新しい福祉文化のうねりをみんなで名古屋から作り出しましょう。
 

----------------------------------------------

基調講演「語りのなにわ文化 〜江戸と上方の違いを中心に〜」
講演 木津川 計(立命館大学名誉教授 上方芸能評論家)




 100万人都市といわれた「江戸」は、人口の半分が武士であった。一方、「大坂」の人口は40万人ほどで、武士は100人に1人程度。したがって、江戸の徳川家を守る警固都市に対して、上方は平和都市といわれる。
 大坂は天下の台所、商いの都市として発展するが、お互いの気遣い、気配りが重要で、言葉もやさしく、軟らかい表現となった。また、商いには「儲ける」ことが重要だが、「儲」の字は、他「者」を「信」じるということと、「人」(自身)と「者」(他人)との間の「言」(コミュニケーション)が重要ということで、商売は信用とコミュニケート重視という文化が育った。方言が衰弱するなかで、地方文化は方言と一体であり、方言を擁護し、標準語とのバイリンガルが重要となる。(報告:脇坂博史)


----------------------------------------------

シンポジウム『その人らしさが輝く語り』に参加して

 今回のシンポジウムは、コーディネターの岡村さんからシンポジウムの語源は、ギリシャ語のシンポシオン、お酒を飲み交わしながらあるテーマについて共に語り合う「饗宴」であるという説明でスタート。シンポジストの僕は、当日までテーマの抽象度の高さに戸惑っていた。
 口火を切ったシンポジストの清水さんは、40年前の重度障害者との出会いから感じた体験が自分の原点にあることを「語り」、そして、金さんからは大阪YWCAでの活動を通して平和教育や人権問題への意識が開花し、それまで封印してきた幼い頃に受けた人種差別や難聴者であることへの自己開示した「語り」を聞いた。二人の「その人らしい輝く語り」受けた僕は、「語り」の問題を「ナラティブ・アプローチやセラピー」という切り口での解説・評論・批評は無益なことだと直感した。その瞬間、言葉足らずで解り難さが生じることは承知の上で、自分の「語り」の方向転換を試みた。おそらく誰もが予想していない、最近、手がけた外国の著者の「語り」と対話する「翻訳作業」という個人的な経験から始めることである。
 そして、「語り」という物語には、「語れる相手、語れる事柄、語れる時と場」が必要なのだということ。そして、援助の場でのクライエントが語る「弱さの物語」から「輝く物語」への支援には、援助者自身の「弱さの自覚」が「ケアの力」の核心となるという話で締めくくった。(詳細は、ホームページ参照)(報告:結城俊哉)


----------------------------------------------

自主シンポジウムA「戦争をめぐる文化と暮らしを問い直す」

2017年度の学会研究助成プロジェクトに応募した「戦争と福祉文化」グループ(結城俊哉・篠原拓也・岡村ヒロ子・阿比留久美)が、それぞれの研究成果を報告しつつ、戦争を引き起こす文化とそれに抗する文化のありようを探っていった。
司会を月田みづえ会員がつとめられ、ご自身も戦争を経験された加藤美枝会員にコメントをいただいた。4名の報告者の報告の切り口が、芸術・坂東俘虜収容所・食事・子ども文化という異なるものであり、また報告人数が多く報告のボリュームも大きかったために、十分な議論ができなかった点が残念であった。報告者間の文化観や福祉文化観に相違がみられる場面もあり、福祉文化という言葉で実現していきたいもの、社会像はどのようなものかということも課題として浮かびあがってきた。(報告:阿比留久美)


----------------------------------------------

自主シンポジウムB 福祉文化と「子ども食堂」の課題と可能性

地域の子どもに無償もしくは安価で食事の提供をする「子ども食堂」が全国各地で急増しており、現在はバブル期にあると言ってよい。
子ども食堂は、地域社会において、重要な役割を担っているが、克服すべき課題も多い。たとえば、人、モノ、カネ、チエ(情報や技術)といった資源が相対的に乏しいうえに、貧困家庭の支援という偏見もある。また、食品衛生に関する意識が相対的に低いと言わざるを得ない。そこで、社会福祉法人堺福祉会ハートピア堺次長の光永直子氏、NPO法人SEIN代表理事の湯川まゆみ氏、羽衣国際大学専任講師の片山千佳氏をシンポジストに招き、子ども食堂の役割、課題とその改善策、新たな可能性について議論を深めた。(報告:小川雅司)


----------------------------------------------

自主シンポジウムC 「福祉文化批評ワークショップ」 


福祉領域で日々生まれているさまざまな事象を「文化の眼鏡」をかけて捉えなおし、その社会的意義や問題点を批判的に検討するためのワークショップが6名の参加で開かれました。
冒頭、薗田碩哉が「文化」を見直すための4つの眼鏡―@文化的な価値を発見する眼鏡、A福祉領域の特色が見える眼鏡、B「遊び」やアートを見つけ出す眼鏡、C福祉実践の背後に働いている力を見つめる眼鏡について解説、それぞれの参加者が自分の問題意識を披露し、「福祉文化批評」を書いていく手順を確認しました。理論的な問題からホットな現場の問題まで、テーマは多岐にわたりました。
学会のホームページの「福祉文化批評」のページにはさっそく11月から新鮮な批評記事が登場するはずです。(報告:薗田碩哉)


----------------------------------------------

スペシャルニーズ・キャンプ・フォーラム
「スペシャルなニーズがある人を取り巻くこれまでの環境と現在、そしてこれから」

 障がいや疾患、または経済的な問題や家庭の問題などにより必要となる、様々な配慮や支援のことをスペシャルニーズと呼びます。スペシャルな経験としてのキャンプをスペシャルニーズのある人も含めた全ての人たちに届けるのが、スペシャルニーズ・キャンプ・ネットワークの使命です。
 このフォーラムでは、大阪で障がいの有無、性別、年齢の区別なく「Camp With?キャンピズ」の名の下に、さまざまなキャンプを実践しているNPO法人キャンピズの参加者、保護者、スタッフの計4名の方々にご登壇いただき、それぞれの立場からキャンプの魅力について語っていただきました。フロアからも活発な質問や意見が飛び交い充実した内容となりました。(報告:野口和行)


----------------------------------------------

懇親会

 小坂享子日本福祉文化学会関西ブロック担当理事の開会あいさつの後、大阪府キャンプ協会永吉宏英会長の乾杯の発声とともに懇親会が始まりました。今回の大会は日本福祉文化学会大阪大会とスペシャルニーズキャンプネットワークフォーラムの共同開催ということもあり、北は北海道から南は九州まで多彩な方が参集いたしました。
会を最も盛り上げてくださったのは70年代から京都を中心に演奏活動を展開されている、スペシャルゲストの末松よしみつさんでした。ヴァイオリンやギターを用いて、会場を縦横無尽に回りながらの演奏に酔いしれ、音楽と語りの福祉文化を堪能した宴となりました。
日本福祉文化学会石田易司会長のあいさつもって閉会となりました。
(報告:水流寛二)


----------------------------------------------

現場セミナーA「バングラデシュとトルコの紅茶と文化」

本セミナーは神戸学院大学准教授佐野光彦氏が持参したバングラデシュの菓子と紅茶を出席者に提供し、『cafe』的空間の演出を意識したものとなった。
Mehedi Hasan Khan氏による『綺麗なバングラデシュ』、創価大学非常勤講師の岩木秀樹氏による『トルコのお話』、そして筆者が『市田響写真展』として各テーマを報告した。
筆者は何気ない日本の日常風景を10年近く記録しているが、今回は佐野光彦氏が撮影したバングラデシュの街の写真と並列して展示することで、文化の再考を試みた。
人々の生活の営みの断片を記録写真として丹念に拾い上げることで、文化的な差異や風俗習慣の特殊性に気づく材料になることを祈っている。(報告:市田響)


----------------------------------------------
現場セミナーB「障がい者の文化活動体験 ビッグ・アイ」

国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は、「国連・障がい者の十年(1983~1992)」を記念して2001年に厚生労働省が、障がい者の「完全参加と平等」の実現を図るシンボル的な施設として設置された。
 理念のひとつに「障がい者自らが芸術・文化活動を実践することを通して社会参加の促進を図る。」としている。
しかし障がい者においても、「身体障害」「知的障害」「精神障害」に大別されるが、その表れ方、障害となるものの要素は実に多様である。施設においても、職員が「点字ブロックは、視覚障がい者には有効であるが、車椅子を必要とする人には凹凸が障害となる。そのため、当施設では視覚障がい者には、くみあわせマットを利用して区別できるように工夫している。音楽会では、多くの人が楽しんでもらえるのは当然であるが、音に敏感な知的障害者においては障害になる。また、介護者も社会参加の機会を制限されていることを余儀なくされる現状がある。当施設でも当事者の声を反映して日々、工夫をして努力している。」との言葉が物語っているように、共生社会実現には、課題が山積していると考えさせられた。私たち社会を生きる、一人ひとりがお互いを理解し合い、認めあえる「合理的配慮」の浸透、様々な課題を背負い、生きづらさを感じている人々が、いき生きと社会参加ができ自己実現ができる社会づくりが求められている。
11月25日に催される「大阪府障がい者舞台芸術オープンカレッジ2018」の舞台稽古中であった。障がい者も健常者も共に、一人ひとりが個性的な表現をしながら、うずをつくり展開していく姿には躍動感にあふれ、圧巻で美しく感じた。当然ながら舞台構成には、演者だけでは成しえなく、演出家をはじめ、演者が内面から自己表現できるよう支える役割を担っている人がおり、これらが融合して観る人々を感動させる。何ひとつ欠けても成り立たない。地域・社会を舞台に全ての人が、演者、陰で支える人になり合いながら物語りを繰り広げていく。そこには、全ての人がスポットライトがあてられるよう創り上げなければならない。どのようにしていくか、この社会を生きる一員として考えながら施設を後にした。
(報告:朴 春代)

----------------------------------------------

現場セミナーC「コリアタウン探訪」

 コリアNGOセンター職員キムさんの案内で、大阪市生野区にある戦後の闇市から続く鶴橋商店街、コリアタウン、朝鮮学校を訪ね歩き、地域の歴史や現状について説明を受け、たいへん有意義でした。翌日の「私的セミナー」、聖徳太子建立の四天王寺(日本最初の福祉施設である悲田院)を訪ねたこともよかったです。(報告:渡邊 豊)


----------------------------------------------

現場セミナーD「子どもの遊び場 大型児童館ビッグバンと冒険遊び場ちょっとバン」

 申しぶんない秋晴れのもと、同一敷地内にある屋外と屋内、二つの遊び場を存分に楽しんだ。
 運営主体は異なるが、いずれも、子どもの遊びは生きる力そのものであるとの理念のもと、“めっちゃオモロイ遊び場”、“豊かな遊びと文化創造の中核拠点”づくりをめざして、おとなが真摯に取り組んでいる姿が印象的だった。(報告:川北典子)


----------------------------------------------

2018年度総会報告  事務局長:岡村ヒロ子

 2018年度の総会は、全国大会の10月28日(日)、9時から開催された。石田会長の挨拶では、今年4月、第7期役員体制は関西への事務局移転からスタートし、軌道に乗りつつある中での全国大会開催であること、意気込み等々が盛り込まれた。
 協議事項として@2017年度事業報告A2017年度収支決算書及び監査報告B2019年度事業方針(案)C2019年度予算書(案)D災害発生時対応マニュアルについてE福祉文化実践学会賞に関する規約見直しについての6議案が審議された。Cの2019年度予算書(案)については、後期に入って日が浅いこの時期に立てると誤差が生じるという理由で年度末に計上することが提案され、審議の結果、承認された。予算に対する希望、災害時のデーター保存法、学会広報に関する提案、これまでの実践賞受賞者からの決意等々について活発な議論が交わされた。
 最後に会員減による財政難が会長から報告され、会員の方々へ学会の活性化に向けて具体的な策を講じて欲しいとの話があった。


シンポジウム報告 「その人らしさが輝く語り」

コーディネーター つどい場「私空間」主宰 岡村ヒロ子


 本大会のテーマ「語りと福祉文化」の趣旨文には、“私たちが忘れがちな私たちが関わるあらゆる人、一人ひとりを大切にする「福祉文化」と「語り」との関連を考えていきたい”と記されていた。
 それを受けてのシンポジウムのテーマは「その人らしさが輝く語り」である。サブタイトルもついておらずなんとも壮大なテーマでシンポジストをおおいに悩ませた。コーディネーターも同様で、展開には一工夫が必要と思い、本来、シンポジウムとはどういうものかを紐どいてもみた。「シンポジウム」の語源はギリシャの哲学者プラトンがお酒の席での「愛」をめぐる討論を著した著書『饗宴』の題名にギリシャ語の「シュンポシオン」の語を用いたことから親しい雰囲気の中で行われる論議を「シンポジウム」と呼ぶようになったことが由来である。「その語源を活かしみよう」そう思い立ち、今回は会場の皆さんにも共に語っていただく参加型のシンポジウムを仕掛けた。最初から3〜4人ずつテーブルに着いていただき、シンポジストもいずれかのテーブルに同席するとしたスタイルをとった。そしてシンポジストの語りの後にテーブルで思いを語り合った。シンポジスト方々にはそれぞれの豊かな実践・研究活動からのエピソードをふんだんに盛り込んで自由な切り口で語っていただき、何が飛び出すか分からないというスリリングな時間となった。
 口火を切ったのは「西宮市に清水あり」といわしめた清水明彦さん。重い障がいをもち、自分の思いをことばにさえ出せない方々が地域で生活し続ける、そんな当たり前で当たり前でないことを40年も続けてきた方である。その人たちにとって『語り』ってなんなんだ。「重い障がいをもったわが子の口から流れ出たよだれを母親はなんのてらいもなく手で拭う、キラキラと光って綺麗だった。それを見て私は釘付けになった。心が突き上げられた。もう、ここから離れられなくなった。気付いたら40年経っていた」と語った。共に活動を続けて「青葉園」が立ち上がり、母親に「この子は青葉園があるから生きられる」とさえいわせた。予算・制度は皆、後付けである。会場から「親としての姿勢も考えなければいけないと思った」「レジュメにある『言語によるコミュニケーションは難しい一人ひとりだが、どれほど語りにあふれた日々であったか』ということについて具体的にどういうことかもっと教えて欲しい」という問いに、清水さんはさらにこう答えた。重い障がいをもった人たちからは「ことば」はでてこない。でも「語り」はある。そしてそこから「物語」が生まれ、それが「共に生きる社会を創る」ことにつながっていくんだ・・・、と。清水さんの「語り」から、清水さんがいわんとしている「その人らしさが輝く語り」とは何かを皆さんはどう感じ取っただろうか・・・。

 お二人目はホリスティック教育をエネルギッシュに展開している金香百合さん。赤いジャケットの下から見え隠れしているなんとも可愛らしいハートのアップリケは何を意味しているのだろうか。「福祉文化学会とホリスティック教育の目指すものはまったく同じです」と実に歯切れのよい口調で切り出し、いきなり「人とは違う自分が大嫌いだった」と生い立ちを赤裸々に語り始めた。先天的な難聴という障害、複雑な家族環境すべてが「劣等感」に結び付き、こころを閉ざして生きていたという。成人して出会った大阪YWCAが金さんの人生の転機となり、そこでの異世代のボランティア会員・職員仲間との交わりを通して「あるがままの自分」を肯定され、自分のことが丸ごと好きになっていった。自尊感情が高くなり、本来の金さんらしさを取り戻していくご自身のこころの変化をお手製のハートを使って語り進めていった。YWCAでの組織キャンプでの経験は、こどもから高齢者、障がい者、外国人、平和・人権についての学びの土台となり、後にホリスティック教育の活動へと金さんを導いていくことになったという。金さんの語りに耳を傾けていると洋服にアップリケされたハートが目に留まった。このハートは皆がもち得る心の在り様なのもしれない・・・、ふとそう思った。

 会場から「私だったらそんなに深く考えようとしない。もうこのくらいでいいかなと思ってしまう。どうしてそんなに溌剌とできるのか・・・」と問いかけられた。その問いに金さんは昔、出会った恋人とのエピソードを披露した。恋人は金さんの補聴器を手に取り「この補聴器、なんて可愛らしいんだろう!補聴器も何もかも全部、可愛らしい君が好きだ」と告白したという。補聴器を可愛いらしいなんて思ったこともない金さんはただただ驚き、「私を丸ごと受け止める人の存在」が、その人を輝かせるのではないかと語った。
 最後に登場したシンポジストは研究者の結城俊哉さん。結城さんは「フォークロア(語り継ぐ)」という民俗学的な視点から「語り」についての研究を深めていらっしゃる。清水さん・金さんの熱い語りへの感想を交えながら研究者の立場から「その人らしさが輝く語り」について静かに語り始めた。
 結城さんは「お二人の語りからは実践者としての揺るぎない強い思いが伝わってきました、すごいなあと・・・。私からの感想だなんて・・・、もう言葉はいりません。私は違った視点から・・・」と、最近、手がけた外国の著者の「翻訳作業」の話題に転じた。当事者は著書の中には存在するが結城さんは会ったこともない、もちろん話を交わしたこともない方である。翻訳は、そんな見えない方との「語り」と対話する日々だったという。知的障害をおもちで実在する方、その方の心(精神)の世界、言葉の世界をどう翻訳するかはたいへんな作業だったという。結城さんはご自身も精神科の看護師だった経験にもふれ、こう述べた。人間は本来、弱い存在であり「無理に語ろうとしなくてもいい」ということ、私達はそのことを受け入れることが大切であると語った。しかし、反面、本来、誰しもが「語る力」をもち得ていることも忘れてはならない。このように人間は、弱さと強さ相反する両面をもつ存在だという。
 結城さんは、まとめのなかで「語り」という物語には、「語れる相手、語れる事柄、語れる時と場」が必要なのだということ、そして、援助の場でのクライエントが語る「弱さの物語」から「輝く物語」への支援には、援助者自身の「弱さの自覚」が「ケアの力」の核心となるという話で締めくくった。
 これは後日談だが、「語り」の問題を「ナラティブ・アプローチやセラピー」という切り口で語ろうと用意していたが、お二人の話を聞くうちに解説・評論・批評は無益なことだと直感したという。解りにくさが生じることは承知の上で、自分の「語り」に方向転換を試みたそうだ。
<まとめ>
 清水さんが最後に語った「共に生きる社会」で主人公になり得た時、その人はその人らしく輝くのではないだろうか。清水さんは、生活の主体者である利用者の方々は、いつのまにか生活者というよりも「支援の対象」として客体化されていると危惧している。利用者の方々と支援者それぞれが率直に「互いに心動かし、共に響き合う」というごく当たり前のことがないがしろにされているのではないかとも語っている。
 今回のシンポジウムでは「その人」にスポットをあてた。言い換えれば「当時者主体」になり得るための「語り」の追及だろう。主体であるべく「個」がないがしろにされている現代社会へ目を向けたともいえる。新しい福祉文化の姿かもしれない。本来の福祉に立ち戻ろうとする動きだろう。
 その人が「その人らしく輝く語り」とはいったいどのような「語り」なのか。私たちは日頃、目の前のその人や自分自身が輝くような「語り」を心がけ、その方の声なき声を引き出すように心がけているだろうか・・・。
「語り」の引き出し手である私自身が輝くことではないか。輝いている私がその人に投げかける思いや考え、そして語りが目の前のその人に響いて、お互いが共鳴し合い、その人に、そして自分に返ってくる、「その人らしく輝く語り」はその繰り返しの中から生まれるように思う。
 三人のシンポジストの方々、そして会場の方々が十分に語り得なかったことは事実である。これを機に皆様方には「その人らしく、自分らしく輝く語り」を引き出すために、本来の「シュンポシオン」を展開していただきたい。


大阪大会事務局よりご案内

遅くなり、ご迷惑をおかけしましたが、
10月20日(土)にメールにて、参加票を送信いたしました。
もし、届いていない場合は、迷惑メールフォルダをご確認いただき、
それでも届いていない場合は、大会事務局までメールにてご連絡ください。

参加申込の皆さんへ
 大会のプログラムを掲載いたします。

■ 大会プログラム
皆様、ぜひご参加下さい。まだ、申し込まれていない方は、お申し込みください。

参加票の発送が遅れております。
事務作業の簡略化のため申し訳ございませんが、メールをご記載の方には、メールにて送信いたします。

郵便のみのかたは、遅くなっておりますので、届かない場合も、事務局では確認できております。
そのまま、会場にお越し下さい。
第29回全国大会大阪大会
■ 大会プログラム
■ 開催チラシ
■ 現場セミナー詳細案内
    現場セミナーについては、現地での清算です。
    また、交通費等は各自負担となりますので、切符等を各自ご購入下さい。
    現場セミナーについては、定員になり次第、締め切ります。
    定員充足状況については、ホームページをご確認ください。
■ 参加申し込み(word版)

■ 福祉文化研究 発表・実践報告
   研究発表申込書
   発表要旨フォーム

■ 自主シンポジウム募集要項
   自主シンポジウム申込書

大会プログラム
【第1日目 10月27日(土)】
12:30-13:00 受付
13:00-13:30 開会セレモニー
13:40-14:50 基調講演「語りのなにわ文化〜江戸と上方の違いを中心に〜」
        講 師:木津川 計(立命館大学名誉教授・上方芸能評論家)
15:00-16:30 シンポジウム「その人らしさが輝く語り」
      シンポジスト:結城 俊哉(立教大学教授)
               清水 明彦(西宮市社会福祉協議会)
              金 香百合(ホリスティック教育実践研究所所長)
      コーディネーター:岡村 ヒロ子(つどい場「私空間」)
16:40-18:00 自主企画・スペシャルニーズキャンプネットワークパネルディスカッション
18:30-20:00 懇親会

【第2日目 10月28日(日)】
9:00-9:50  総会 ※本学会会員の皆様は必ずご参加ください。
スペシャルニーズキャンプネットワークは9:00より障がい者キャンプの実際の見学となります。
10:00-11:50 研究発表
12:00-12:30 閉会セレモニー
12:30以降 現場セミナー
       A.バングラデシュの食と文化
       B.障がい者の文化活動体験 Big-I
       C.コリアタウン探訪(定員20名)
       D.子どもの遊び場 大型児童館ビッグバンとちょっとバン(定員20名)

 
 

 


もどる